セロリアック(celeriac)

henri772005-01-14


この時期、僕の街の野菜市場にはヨーロッパ原産の珍しい野菜が多く出回っている。元々寒く乾燥気味のところで育つ野菜が多いので、イタリア料理ブームの為もあるが、緑の少ない冬には最適なのだろう。単にレストラン用の珍しい野菜というだけなら、高いし手を出さないのだけど、地元の市場では何たって安いので、使ってみようという気になる。このセロリアックも、日本では馴染みは薄いが、ヨーロッパの寒い地方中心に流通しているあちらではごくポピュラーな野菜だ。名前でお分かりの通りセロリの仲間で、根っこが丸く肥大して食用になる。フランスではceleri-rave(蕪セロリ)、ドイツではKnollensellerie(球セロリ)と、様々な視点による命名があって面白い。celery-rootという言い方もあって日本での根セロリというのはこれの直訳だろう。こんなことばかり聞き回っていたので、あちらの取引先の人から「君は仕事のボキャブラリより、料理のボキャブラリの方が多いんじゃないか?」と馬鹿にされてしまった。原産国は図鑑等では不明となっているが、ヨーロッパ辺りには普通のセロリと共に自生しているので、どちらが先祖かは知らないが、北ヨーロッパから中央アジアにかけてが原産の様な気がする。

さて、食べ方だが、こちらは普通のセロリとは違い、葉よりも根を主に使う。流通上は大抵葉は切り落とされてしまっていることが多い。ごつごつの皮なので厚めに剥いて調理する。外見からは想像できない白く滑らかな実が現れる。赤いシミや空洞が入っている場合があるが、これは水不足の為。この野菜は水を大量に必要とする様で、不足すると渋みが強くて食べ難くなってしまう。レストラン用に出荷される奴はその辺、栽培にも気が使われていて滑らかで実が大きい。薄く切れば生でも食べられるが、辛いと思う人は、ごく軽く茹でてサラダにするかマリネにして食べると良い。セロリより上品な味わいだ。セロリと同じくリンゴとの相性は抜群。葉っぱは使えないという人もいるがこれは嘘。新鮮なうちに切り落としたら、逆さにして台所に吊って乾燥させておこう。本家のセロリよりよっぽど香り高く、スープや煮込み料理に1房砕いて入れると、素晴らしい香味と出汁が出て柔らかい葉先も食べられる。捨てるなんてもったいない。

勿論煮込んだり、フライ、ピュレにしても美味しい。カレーやポトフの実、タマネギと合わせてのポタージュなどで楽しめる。ベーコンや塩豚とタマネギを炒めた所にセロリアックの薄切りを加えて白ワインで煮込み、ポテトマッシャーで荒くつぶしてからパスタと絡めるのも秀逸だ。最後に珍しいところで和風のレシピを2品。千六本に切ったものをオリーブオイルと鷹の爪で炒め、しんなりしたら醤油を注いで更に炒め、最後にごま油をまわしかける。セロリアックのキンピラだ。また、ピュレにしたものを鰹出汁に入れ白みそを溶いて、とろ火で香りと濃度が出るまで煮て椀に入れ、葉のみじん切りを散らす。ちょっと変わった摺り流し汁が出来る。