水仙(スイセン/narcissus)

henri772005-01-21


水仙はイギリスの国花なのだそうである。厳しい冬が訪れ、木々が枯れてしまい、何もない水辺に凛としてたたずむ水仙をイギリスの人は愛し続けてきたらしい。品種改良され1万数千種もの種類があるそうだ。暖かい時期には地上部を枯らして休眠してしまい、一番寒い冬に好んで花をつける。そういえば、いつも小寒大寒のこの時候、秋の名残の花がすべて枯れてしまい、椿や沈丁花が咲き始めるまでの間を繋いでくれるのは、この水仙である。冬枯れの中にこの花を見つけるとホッとする。

ご存知の方も多いと思うけど、narcissusのラテン語名から派生したと言われるnarcissism(ナルシズム)にまつわる話がギリシャ神話神話に出てくる。美少年のnarcissusが水面に映った自分の姿に見とれて水仙になってしまうあの話である。他にも、ホメロスの詩やコーランにも喜びをもたらす花として登場している。地中海を中心に古代から親しまれていた花らしい。ただ不思議なことに中世の文学作品や絵画等には登場しないのだそうである。薬としても使われてきた様で、鎮痛麻酔効果があるらしい(飲用は危険..念のため)。ナルシズムはこの陶酔感から来ている、という異説もあるようだ。

日本で見られるのはニホンスイセンという種類の水仙である。ヨーロッパ原産なので、アジア起源の花ではないけれど、「水仙」という名前から想像できる様に、水辺に咲くたたずまいは中国でも愛されたに違いない。花の中央にある副花冠は杯(さかずき)にも見立てられていて、祝ごとにも使われるおめでたい花でもあったようだ。日本の野生種は海岸線のあちこちに分布しており、ヨーロッパか中国に伝わった水仙の球根が浜辺に流れ着いたのかもしれない。実際、水仙の球根が水の流れにのって繁殖した例もあるそうだ。