コールラビ(Kohlrabi)

henri772005-02-01


地中海北岸の原産で、中国迄伝わりながら、日本ではとうとう定着しなかった野菜である。ドイツ語の名前から想像出来る様にドイツ語圏ではよく使われる冬野菜だ。Kohlはキャベツ、Rabiはカブで、キャベツ蕪という命名。姿は蕪に似ているが、実はキャベツの仲間で、茎の部分が肥大したものだ。そのままかじると、キャベツの芯の所を瑞々しくした様な味がする。葉が独特の付き方をしていて、その点からも蕪とは来歴の違うのが分かるだろう。中国や台湾では球形甘藍と呼ばれている。甘藍もキャベツの意味なので忠実な名前と言える。表面が緑と紫の品種がある。

この野菜は、どうやらウイーン辺りで好んで食され、ヨーロッパ全土に広がったようだ。イスラエルでも随分と出回っていて、ユダヤ人の好物がウイーンで定着したのか、ウイーンの名産をオーストリアユダヤ人が持ち出したのかは分からないが、イギリス等の英語圏でもドイツ語名で出回っているところを見ると、ドイツ語圏であるウイーンがその出発点になっているのではないかと思う。僕は知らなかったのだが、イタリア野菜栽培で有名な「ファットリア葦毛の里」さんのホームページ(http://www.iwasaki-net.or.jp/fattoria/index.html)には、紫の品種を「ウイーンの紫」と呼ぶ、という話が紹介されていた。案外この憶測は正しいのかもしれない。

キャベツと同じ様に煮ると素敵な甘みが出てくるし、煮崩れし難い肉質なので、カレーやシチュー等の煮込み料理全般に向いている。ヨーロッパでは、肉の旨味を吸わせる素材として使われる。くり抜いてひき肉を詰めてオーブンで焼いたり蒸しても。生でスライスしてサラダにしたり、塩をあててしんなりさせてから酢でマリネという手もある。皮は固いので剥いて使う。葉付きの新鮮なものが手に入ったら、煮ると美味しいので捨てない様に。最後にウイーンの定番レシピを紹介しておこう。ホーローの鍋に、バターを溶かし、砂糖を入れて飴色に成るまで中火を通す(カラメルを作る訳だ)。そこに繊維を断つ方向に短冊状に切ったコールラビと刻んだ葉を入れてざっとかき混ぜ、水を少量注いで蓋をし、焦げない様揺すりながら蒸し煮する。柔らかくなったら塩胡椒で味を整え、小麦粉を少し振り入れて濃度を付けて煮汁を絡ませれば、出来上がり。日本人には馴染みのない料理法だが、ターニップ、ルタバカ、ジャガイモにも適用できるので覚えておくと良い。