野菜饅頭/野菜お焼き

最近は、スーパーの流通が多く最初から切り離されてしまっていることが多いけれど、根菜に瑞々しい青葉が付いた状態で売られていることがある。大根、人参、蕪等根菜の葉っぱの部分である。何も言わないと親切に切り落として捨ててくれる?大きなお世話である。是非献立に活用しよう。僕は、他の人が捨てた葉っぱまで貰ってくる(貧乏なだけ?)。葉がついたままになっていると、根菜の部分の栄養が吸われてしまうので、すぐ切り離して茹でてしまおう。この「即茹」が肝心。根菜の葉は場所を取るし、ちまちま使っていたのでは拉致があかず小家族では持て余してしまい、結局枯らしてしまう。沸騰水で2、3分茹で、流水で冷やしてから絞り、冷蔵または冷凍しておけば、いつでも使えるし場所も取らない。ただ、入り組んだ所に農薬が残留していることもあるので、ボールで3回くらい水を取り替えながら浸け洗いしよう、リスクを相当減らせる(流水でさっと洗うだけの人がいるが、効果が薄いのでこの方法をお勧めする)。

さて何に使うか?良く有るのが、佃煮、辛煮だろうか。刻んだ葉を醤油と酒で炒煮して保存性を高める調理法である。最初に油で炒めたり、味噌や柑橘の汁、カレー粉等を混ぜるバリエーションも有りだ。保存性を高めたいなら鷹の爪や梅干肉を入れる。暖かいご飯やお茶漬けに合わせて食が進むし、お握りやお好み焼きに混ぜ込んだりチャーハンに使っても良い。細かくちぎった豆腐や麩と合わせ餃子の種という手もある。そこにトマトを加えて洋風に煮込み、ベジタリアン・ミートソースという応用もいける。

朝ご飯やお八つに楽しいのは、作りおいた佃煮、辛煮を流用したり、あるいは最初からこの目的のために、葉の刻んだのと、キノコ類や胡麻、砕いたクルミや棗を一緒に炒めて加えたいわゆる「野菜餡(味噌や片栗粉で濃度をつけても良い。漬け物のあまりが有れば刻んで一緒に混ぜ込んでしまおう)」で作る饅頭と「お焼き」だ。

レシピは、薄力粉(好みで全粒粉やそば粉を混ぜても良い)とドライイースト、砂糖と、塩を少々ボールに入れ、ぬるま湯を注ぎながら箸を少し開いてぐるぐるかき回す。粉のコンディションにもよるが、大体粉100グラムに対しぬるま湯50CC程度の割合だろうか。多少水分を調節してぽろぽろに粉と水が一体化したら、手で一つに纏めてオリーブオイルを少し加え、表面が滑らかになるまで手で捏ねる。よく親の敵かの如く力を入れる人がいるが、そんな必要はない。丁寧に一つに纏めあげる感じでやればだんだん滑らかになってくる。ラップで閉じて乾燥を防ぎ、夏ならそのまま、冬は30度以上になる位に保温して倍の大きさ位迄発酵させる。発酵後一旦ガスを抜き丸め直す、地を1個分づつちぎって丸め、平にのばす。オリーブオイルかごま油を少し塗り、そこに野菜餡を載せ(載せすぎると破れるので注意)四方から閉じて結着させ饅頭の形にちょっと捻る。蒸気の上がった蒸し器に耐熱シートを引いて(あるいは饅頭を笹や竹の皮に載せて)中火より強めの火で15分蒸して出来上がり。食べきれない分は冷蔵ないし冷凍しておく。

日本伝統のお焼きにしても良い。その場合は、粉とぬるま湯だけで饅頭のときと同じ要領で地を作り、30分程寝かせるだけでよい。野菜餡を入れて閉じたら、薄めの円柱状に形を整えて、油を敷かない(敷けば中華風の餅)フライパンや網に載せ、小さめの火で両面こんがり焼き上げるだけだ。まあ、そんなのある人は殆どいないだろうが、勿論昔ながらに囲炉裏の灰に埋めておいても良い。肉なんか入れなくても美味しくいただける。餡のバリエーションが楽しい。

コールラビ(Kohlrabi)

henri772005-02-01


地中海北岸の原産で、中国迄伝わりながら、日本ではとうとう定着しなかった野菜である。ドイツ語の名前から想像出来る様にドイツ語圏ではよく使われる冬野菜だ。Kohlはキャベツ、Rabiはカブで、キャベツ蕪という命名。姿は蕪に似ているが、実はキャベツの仲間で、茎の部分が肥大したものだ。そのままかじると、キャベツの芯の所を瑞々しくした様な味がする。葉が独特の付き方をしていて、その点からも蕪とは来歴の違うのが分かるだろう。中国や台湾では球形甘藍と呼ばれている。甘藍もキャベツの意味なので忠実な名前と言える。表面が緑と紫の品種がある。

この野菜は、どうやらウイーン辺りで好んで食され、ヨーロッパ全土に広がったようだ。イスラエルでも随分と出回っていて、ユダヤ人の好物がウイーンで定着したのか、ウイーンの名産をオーストリアユダヤ人が持ち出したのかは分からないが、イギリス等の英語圏でもドイツ語名で出回っているところを見ると、ドイツ語圏であるウイーンがその出発点になっているのではないかと思う。僕は知らなかったのだが、イタリア野菜栽培で有名な「ファットリア葦毛の里」さんのホームページ(http://www.iwasaki-net.or.jp/fattoria/index.html)には、紫の品種を「ウイーンの紫」と呼ぶ、という話が紹介されていた。案外この憶測は正しいのかもしれない。

キャベツと同じ様に煮ると素敵な甘みが出てくるし、煮崩れし難い肉質なので、カレーやシチュー等の煮込み料理全般に向いている。ヨーロッパでは、肉の旨味を吸わせる素材として使われる。くり抜いてひき肉を詰めてオーブンで焼いたり蒸しても。生でスライスしてサラダにしたり、塩をあててしんなりさせてから酢でマリネという手もある。皮は固いので剥いて使う。葉付きの新鮮なものが手に入ったら、煮ると美味しいので捨てない様に。最後にウイーンの定番レシピを紹介しておこう。ホーローの鍋に、バターを溶かし、砂糖を入れて飴色に成るまで中火を通す(カラメルを作る訳だ)。そこに繊維を断つ方向に短冊状に切ったコールラビと刻んだ葉を入れてざっとかき混ぜ、水を少量注いで蓋をし、焦げない様揺すりながら蒸し煮する。柔らかくなったら塩胡椒で味を整え、小麦粉を少し振り入れて濃度を付けて煮汁を絡ませれば、出来上がり。日本人には馴染みのない料理法だが、ターニップ、ルタバカ、ジャガイモにも適用できるので覚えておくと良い。

湯麺(タンメン)

冬は、白菜やキャベツが安いし美味しい。でも、少人数の家族では食べきれない。それでも、市場で買った丸ごとの奴は味が深いし断然安い。そんな時に僕が作るスピード料理の1つがこの湯麺だ。冬場に豊富な葉野菜をたっぷり楽しむことが出来る。僕は家庭で作るラーメンには湯麺が最も適していると思っている。というのは、ラーメンブームが行き過ぎて、やたらに味の凝ったラーメンが叛乱しているご時世、男の趣味に邁進するなら兎も角、家でわざわざ自作する必然性はないからだ。それに、味が濃いのが流行なのか、毎日食べたくなる様なのにはなかなかお目にかかれない。たまに酔っぱらった後には美味しいと思うが、野菜が僅かで塩辛いスープ。体にも悪そうだ。野菜を沢山入れた毎日食べられる湯麺は、自作するのにはピッタリなのだ。

いつでも気軽に作れること、野菜の滋味を十分に引き出して楽しむこと。この2つを考えると、スープに凝る必要はない。野菜の種類を組み合わせたっぷり使えば、豊かな味が引き出せて、豚骨だ鶏ガラだので味を整えなくても旨味は十分引き出せる。化学調味料アミノ酸)入りのスープの素やコンソメ等、もちろん全く不要だ。

で、レシピの紹介。スピード料理なので、メンを茹でる以外は一つの鍋で作ってしまおう。中華鍋か手鍋を用意する。ごく少量の油を敷き、豚肉の細切れを少量炒める(味のアクセントの役目だけなので、ほんの少しで良い。塩豚を使うとなお美味。ベーコンでも)。多少焦げ目がついた所で、水を注ぎ入れ、昆布を1枚と煮干しを数本、戻し椎茸を汁ごと(入れすぎると嫌みな味になるので少量)放り込んで、火加減を中火にしておく。水が沸いてきたら昆布を取り出し(好みで刻んで戻して使っても良い)、10分程煮干しを煮だしたら、煮干しも取り出し、もやしと白菜かキャベツ、そしてネギかタマネギを刻んだのをたっぷりと入れて、強火で煮立てる。野菜の量が減ってきたら、ニラか適当な青菜の刻んだのを放り込んで、自然塩(これだけは譲れないので良い奴を使おう)、胡椒、ごく少量の醤油(薄口が有ればなお良い)で調味する。時間を見計らって茹でておいたメンを丼に入れ、スープだけ先に注いでメンと馴染ませてから野菜をたっぷり上に載せれば、出来上がりだ。メンは乾麺やインスタント(添付のアミノ酸入りスープは勿論捨てよう)でもそれはそれで。胃が弱っていても食べられる優しい味の一品。

薄味で寂しいと思う人は、水を入れると同時に、帆立貝や浅蜊、冷凍のシーフード、殻付きの海老などを放り込んでおけば(途中で取り出してから殻を外して最後に盛り合わせると豪華に見える)、チャンポン風の味にすることが出来る。逆にもっとさっぱりさせたい人は煮干しの頭と内蔵を外して使う。ベジタリアン風には、豚と煮干しを省略し、水の代わりに、椎茸の戻し汁や大豆出汁、野菜くずの煮汁を加えれば良い(野菜くずににセロリの葉やパセリの茎等香味野菜を混ぜておくと良い出汁が出る)。兎に角野菜はたっぷり使うことだ。

金柑(きんかん)

henri772005-01-23


今年の冬は、喉の風邪が大流行りで、カリンとこの金柑がずいぶんと重宝している。甘露煮にした方は取っておいて、籠にいれて置いておくとちょっとしたオブジェにもなるので、正月はもっぱら枝付きのまま飾っておいて口に放り込んでいた。ビタミンCが豊富な上、喉に良い。特に皮には薬効成分が含まれているらしく、皮ごと食べられるというのは嬉しいことだ。そういえば、陳皮や橙皮など、柑橘類の皮は重要な生薬素材でもある。金柑の原産は中国で、日本には千年程前に伝わり姫橘とか金橘といった名前で呼ばれていたということだ。

柑橘類と言えば、その名前の橘(たちばな)が気になる。古事記万葉集でも頻繁に登場し、これがもっぱら日本特有の柑橘だったらしい。姫橘以外、酢橘(すだち)等にも名前が継承されている。だんだんに外来種の柑橘類が入ってきて、現在の温州みかんが主流になっていったのだろう。橘の原生種が残っているかは謎の様だが、酸味が非常に強かったらしく、存外、酢橘や沖縄のシークヮーサー(ひらみレモン)の様なものだったのかも知れない。柑橘類は常緑で葉を落とさないので、古事記では橘は不老長寿の実として紹介されている。あながち眉唾ではなかった訳だ。

さて、まずは定番の甘露煮の作り方。楊枝でヘタを外し穴を数カ所にあけて下ごしらえをした金柑を一晩水に浸けておく、水から茹で柔らかくなったら一旦茹でこぼしし、改めて酒を3割程度混ぜた水に砂糖か蜂蜜を甘みとして加え、水気が無くなる迄焦がさない様に煮含める。数滴醤油を注すとコクが出る。お茶請けやあしらいとして格好をつけたいなら、最初に茶筅(せん)の様に縦に筋を入れて種を掻き出してから同じ様に煮含めても良い。長く保存するなら果実酒や蜂蜜漬けにするのも手だ。砂糖が無かった時代はもっぱら塩漬けにされて保存されていた。その場合は塩抜きするか薄くスライスして使うと良い。変わった所では、甘露煮か塩漬抜きしたものに衣を付け、天ぷらにするのもおつなものだ。

水仙(スイセン/narcissus)

henri772005-01-21


水仙はイギリスの国花なのだそうである。厳しい冬が訪れ、木々が枯れてしまい、何もない水辺に凛としてたたずむ水仙をイギリスの人は愛し続けてきたらしい。品種改良され1万数千種もの種類があるそうだ。暖かい時期には地上部を枯らして休眠してしまい、一番寒い冬に好んで花をつける。そういえば、いつも小寒大寒のこの時候、秋の名残の花がすべて枯れてしまい、椿や沈丁花が咲き始めるまでの間を繋いでくれるのは、この水仙である。冬枯れの中にこの花を見つけるとホッとする。

ご存知の方も多いと思うけど、narcissusのラテン語名から派生したと言われるnarcissism(ナルシズム)にまつわる話がギリシャ神話神話に出てくる。美少年のnarcissusが水面に映った自分の姿に見とれて水仙になってしまうあの話である。他にも、ホメロスの詩やコーランにも喜びをもたらす花として登場している。地中海を中心に古代から親しまれていた花らしい。ただ不思議なことに中世の文学作品や絵画等には登場しないのだそうである。薬としても使われてきた様で、鎮痛麻酔効果があるらしい(飲用は危険..念のため)。ナルシズムはこの陶酔感から来ている、という異説もあるようだ。

日本で見られるのはニホンスイセンという種類の水仙である。ヨーロッパ原産なので、アジア起源の花ではないけれど、「水仙」という名前から想像できる様に、水辺に咲くたたずまいは中国でも愛されたに違いない。花の中央にある副花冠は杯(さかずき)にも見立てられていて、祝ごとにも使われるおめでたい花でもあったようだ。日本の野生種は海岸線のあちこちに分布しており、ヨーロッパか中国に伝わった水仙の球根が浜辺に流れ着いたのかもしれない。実際、水仙の球根が水の流れにのって繁殖した例もあるそうだ。

セロリアック(celeriac)

henri772005-01-14


この時期、僕の街の野菜市場にはヨーロッパ原産の珍しい野菜が多く出回っている。元々寒く乾燥気味のところで育つ野菜が多いので、イタリア料理ブームの為もあるが、緑の少ない冬には最適なのだろう。単にレストラン用の珍しい野菜というだけなら、高いし手を出さないのだけど、地元の市場では何たって安いので、使ってみようという気になる。このセロリアックも、日本では馴染みは薄いが、ヨーロッパの寒い地方中心に流通しているあちらではごくポピュラーな野菜だ。名前でお分かりの通りセロリの仲間で、根っこが丸く肥大して食用になる。フランスではceleri-rave(蕪セロリ)、ドイツではKnollensellerie(球セロリ)と、様々な視点による命名があって面白い。celery-rootという言い方もあって日本での根セロリというのはこれの直訳だろう。こんなことばかり聞き回っていたので、あちらの取引先の人から「君は仕事のボキャブラリより、料理のボキャブラリの方が多いんじゃないか?」と馬鹿にされてしまった。原産国は図鑑等では不明となっているが、ヨーロッパ辺りには普通のセロリと共に自生しているので、どちらが先祖かは知らないが、北ヨーロッパから中央アジアにかけてが原産の様な気がする。

さて、食べ方だが、こちらは普通のセロリとは違い、葉よりも根を主に使う。流通上は大抵葉は切り落とされてしまっていることが多い。ごつごつの皮なので厚めに剥いて調理する。外見からは想像できない白く滑らかな実が現れる。赤いシミや空洞が入っている場合があるが、これは水不足の為。この野菜は水を大量に必要とする様で、不足すると渋みが強くて食べ難くなってしまう。レストラン用に出荷される奴はその辺、栽培にも気が使われていて滑らかで実が大きい。薄く切れば生でも食べられるが、辛いと思う人は、ごく軽く茹でてサラダにするかマリネにして食べると良い。セロリより上品な味わいだ。セロリと同じくリンゴとの相性は抜群。葉っぱは使えないという人もいるがこれは嘘。新鮮なうちに切り落としたら、逆さにして台所に吊って乾燥させておこう。本家のセロリよりよっぽど香り高く、スープや煮込み料理に1房砕いて入れると、素晴らしい香味と出汁が出て柔らかい葉先も食べられる。捨てるなんてもったいない。

勿論煮込んだり、フライ、ピュレにしても美味しい。カレーやポトフの実、タマネギと合わせてのポタージュなどで楽しめる。ベーコンや塩豚とタマネギを炒めた所にセロリアックの薄切りを加えて白ワインで煮込み、ポテトマッシャーで荒くつぶしてからパスタと絡めるのも秀逸だ。最後に珍しいところで和風のレシピを2品。千六本に切ったものをオリーブオイルと鷹の爪で炒め、しんなりしたら醤油を注いで更に炒め、最後にごま油をまわしかける。セロリアックのキンピラだ。また、ピュレにしたものを鰹出汁に入れ白みそを溶いて、とろ火で香りと濃度が出るまで煮て椀に入れ、葉のみじん切りを散らす。ちょっと変わった摺り流し汁が出来る。

茴香(フェンネル/fennel)

henri772005-01-08


またまた洋野菜だが、関心するほど立派なのが野菜市場に出ていたので、紹介。茴香(ういきょう)という漢方薬で聞く名前の方がピンとくるフェンネルだ。僕の庭にも植わっているので、ここまで育てるのはかなり時間がかかり大変なのが良く分かる。本当に農家の方頑張っていらっしゃる。フェンネルには、写真の様に根茎部が肥大するフローレンス種、そして肥大しないスイート種、そして名前は忘れてしまったが緑が鮮やかで良く花材に使われている種類がある。どれも、セリ科独特の素敵な芳香を持っているので、種、根茎部、種と丸ごと食用に利用できる。原産は恐らく西アジア辺り、早くからヨーロッパにも伝わっていて、種はカレーの香辛料や生薬素材としても有名だ。この香りは勇気の出る香らしく、アングロサクソンの力や勇気の象徴で、魔除けにも使われたらしい。

さて、大変立派な葉っぱだけど、サラダや料理に散らす位で意外に使いきれないようで、市場でも根茎部だけ買って行く人が多い。良くあるレシピに魚の腹にこれを詰めてオーブンで焼く料理があるが、もっと日本人にピッタリくる魚料理があるので紹介しておこう。お隣琉球の料理で「イーチョーバ(茴香葉)風味のマース煮」。大きめの鍋に水と泡盛(ないし清酒)と塩を入れ、フェンネルの葉を敷いて内蔵を取り除いて包丁の切れ目を入れた魚を並べる。魚の上にもフェンネルの葉を被せ、落としぶたをして、煮魚の要領で煮る。魚に火が通ったら葉と魚を格好よく盛りつける。フェンネルの香りと魚の本当の味が楽しめる秀逸な一品だ。マースとは塩のことで、塩だけの煮魚という訳だ。塩は勿論沖縄の滋味溢れる海塩を使おう。ハタでやるととびきりだが、どんな魚でも美味い。沖縄の料理を繊細でないと馬鹿にする人がいるが、マース煮という料理を見る限り、本土の砂糖と醤油で魚の個性を殺してしまう煮魚よりよっぽど上等な調理法だと思う。沖縄でも最近の若い人は作らなくなっている様で、残念だ。

根茎部の方の一押しは、「バター風味の蒸し焼き」。根茎部の根元から包丁を入れて、8〜12等分程に割り、固い芯の部分を取り除いておく。密閉の出来る鍋にバターを溶かし入れ(少量でも香りは出るのでダイエットしている人はオリーブ油と混ぜて)、根茎部を入れて軽くソテーする。そこに白ワインか清酒を注いでバターで足りない塩分を補い、蓋をピタッととじて蒸し煮にする。多少歯ごたえが残る程度に火が通ったら、葉っぱの先の方の部分とレモン汁を入れてひと呼吸蒸して、全体をざっとかき回したら終わり。バター、レモンとの相性が抜群だ。