金柑(きんかん)

henri772005-01-23


今年の冬は、喉の風邪が大流行りで、カリンとこの金柑がずいぶんと重宝している。甘露煮にした方は取っておいて、籠にいれて置いておくとちょっとしたオブジェにもなるので、正月はもっぱら枝付きのまま飾っておいて口に放り込んでいた。ビタミンCが豊富な上、喉に良い。特に皮には薬効成分が含まれているらしく、皮ごと食べられるというのは嬉しいことだ。そういえば、陳皮や橙皮など、柑橘類の皮は重要な生薬素材でもある。金柑の原産は中国で、日本には千年程前に伝わり姫橘とか金橘といった名前で呼ばれていたということだ。

柑橘類と言えば、その名前の橘(たちばな)が気になる。古事記万葉集でも頻繁に登場し、これがもっぱら日本特有の柑橘だったらしい。姫橘以外、酢橘(すだち)等にも名前が継承されている。だんだんに外来種の柑橘類が入ってきて、現在の温州みかんが主流になっていったのだろう。橘の原生種が残っているかは謎の様だが、酸味が非常に強かったらしく、存外、酢橘や沖縄のシークヮーサー(ひらみレモン)の様なものだったのかも知れない。柑橘類は常緑で葉を落とさないので、古事記では橘は不老長寿の実として紹介されている。あながち眉唾ではなかった訳だ。

さて、まずは定番の甘露煮の作り方。楊枝でヘタを外し穴を数カ所にあけて下ごしらえをした金柑を一晩水に浸けておく、水から茹で柔らかくなったら一旦茹でこぼしし、改めて酒を3割程度混ぜた水に砂糖か蜂蜜を甘みとして加え、水気が無くなる迄焦がさない様に煮含める。数滴醤油を注すとコクが出る。お茶請けやあしらいとして格好をつけたいなら、最初に茶筅(せん)の様に縦に筋を入れて種を掻き出してから同じ様に煮含めても良い。長く保存するなら果実酒や蜂蜜漬けにするのも手だ。砂糖が無かった時代はもっぱら塩漬けにされて保存されていた。その場合は塩抜きするか薄くスライスして使うと良い。変わった所では、甘露煮か塩漬抜きしたものに衣を付け、天ぷらにするのもおつなものだ。