艶葉蕗(ツワブキ)

henri772004-10-29


本格的に冬が始まった。冬の入り口にさしかかるといつも決まって一斉に花をつけるのがこのツワブキだ。どうやら寒波が開花の信号になるらしい。だんだん地上から花が消えて行くこの時期に、キク科の特徴的な山吹色の花と艶のある緑が、庭木の根元を力強く彩ってくれる。かなり昔から庭木として定番の植物だけど、海岸線を歩いていると群生しているのを見ることがよくある。元々は海浜性の野生植物である。風に対抗するための低くどっしりした形態、乾燥しないための肉厚葉、といった海浜性典型の特徴を持っている。本家の蕗とは違って、蕗の薹を伸ばさないで、普通に花がつく。

九州名産で有名なキャラブキは、実は本家の蕗ではなく、このツワブキで作るのが本式だ。春先の柔らかい葉柄を使う。これを食べてみる迄は普通の蕗の方を使っていたのだけど、こっちの味を知ってからは、春に群生している場所から分けてもらい毎年自分で作ることにしている。普通の蕗と違って、葉柄に肉がぎっしり詰まり、何とも言えない野趣味のあるエキスが流れ出してきて、濃く煮含める料理ならツワブキの方が断然美味しい。キャラは香木の伽羅から来ているそうだが、切り口の雰囲気でもツワブキに軍配が上がる。

昔から、漁師さんが良く食べる植物らしく、漁師町を旅行で訪れた際に、これを煮たものが魚の付け合わせに出て来たことがあった。聞いてみると、魚の毒消しの効果もあるので、昔から漁師の間では定番のおそうざいだということだった。ドクダミと同種の毒消し成分を含んでいるらしい。そう言えば、ちょっと眉唾という気もするが、雑食性のカラスが腐った魚を啄んで調子を崩してしまったとき、このツワブキを好んで突くそうだ。