人参(ニンジン)

henri772004-11-04


僕は人参の葉っぱが結構好きなので、野菜市場に行くと必ず葉がついたモノを丸ごと買う。スーパーや八百屋さんで葉付きが出回らない理由は、葉を付けたままにして翌日に持ち越すと、葉に養分を取られてしまうので、直ぐに切り離して鮮度を保つことが必要だからだ。青々とした葉が手に入るのは、朝取り野菜でなければ出来ない贅沢という訳だ。野菜市場でも「葉を切り落として捨てて下さい」といって持って帰らない人が多い。だから、前の人が残していくと目ざとく見つけ「それ貰えるかな?」と、ちゃっかり葉だけタダで手に入れてくる。収穫適期になった人参を収穫せずそのまま育てて行くと、塔が立って芹そっくりの花を咲かせる。セリ科の植物なのだということが分かる。葉を良く観察すると、確かに芹と似ている。同じ仲間にはパセリがある。

最近は、市場にも日本在来種の京人参と呼ばれる金時人参も出回る。煮物等にするには、木目が細かくて柔らかな食感の在来種の方がずっと美味しい。すっかりお馴染みの食材だが、普及したのは意外に遅く、明治以降、文明開化の洋食と一緒に入って来たらしい。それまでは13世紀頃に入って来た現在も関西や沖縄に残る金時人参、島人参など東洋系の人参が主力だったと聞いた。長細くて抜き取るのが大変だし、栽培も西洋系の方がし易かったというのが理由の様である。三浦大根が廃って青首大根が増えてたのと同じ経緯みたいだ。もっと昔にさかのぼると人参と言えば朝鮮人参のことで、最初は東洋種の人参は芹人参と呼ばれていた。だから古い文献では、人参は薬用人参と考えないと読み間違える。

今日は、あちゃら風の料理を2品。まずは即席ピクルス。ホーロー鍋に水とお酢を張り、砂糖と塩、適当なハーブ(月桂樹、タラゴン、ディルあたり)を加え、人参を切ったものを冷たいところから加熱して5分程沸騰させたら火を止め、そのまま鍋ごと冷ます。これだけだ。即席だが上手に作ると買って来たものよりよほど美味い。それからインド風の人参デザート、クルフィ。牛乳に砂糖を溶かし人参を摺り卸したものを放り込み、水分が無くなる迄弱火で気長に煮詰める。しっとりしているけれど水気がこぼれ出ない状態なら完璧。最初にカルダモンを振り入れて香りを付け、最後にピスタチオを添えれば、本場の完全版レシピとなる。冷やしても美味い。葉っぱは直ぐに下茹しておいて色々使おう。佃煮風にして、弁当の握り飯に混ぜ込むのが一番のお気に入りだ。