赤い大根(ダイコン)

henri772004-11-06


実はこれ大根なのだが、名前がよく分からない。野菜市場では、このところ本当にいろいろな種類の大根が出回っているのだが、売りに来ている農家のおばさんに聞いても皆違うことを言う。買い手が喜ぶので色々作ってはみるのだけど、自分たちも初めての挑戦なのでよく分からん、といういうことらしい。ともあれ、都市近郊ということもあって、買い手側のニーズををよく考えていて、珍しい西洋野菜から京野菜まで、かなりの種類の野菜を並べてくれるので、料理する僕らは本当に楽しませて貰っている。最近は、それを聞きつけた東京のレストランが早朝に若い人を寄越して買い占めて行く。そうなると品物が昼過ぎには品薄になってしまうので、近所の客である僕らには大迷惑だ。農家の方達には悪いのだけど、あまり紹介して欲しくないのが本音である。

さて、この赤い大根だが、辛み大根の類いだと思う。葉はちょっと蕪に似ているけれど、生で食べると大根の味で猛烈に辛い。僕の憶測に過ぎないけれど「ねずみ大根」と呼ばれる系統だろうか。この系統は植えた土によって、赤い色が出ることがあるらしい。同じ赤い大根でも、もう少しスマートでサラダの様に丸かじりできる品種もあり、そちらは「赤大根」と呼ばれている。ややこしい。大根は、日本人の食生活に深く根付いていて、先史時代から米や大豆とともに食卓の主役だったようだ。だから品種改良が盛んに行われていて、江戸の末期には100種類を超えていたらしい。そう言えば、京都の農家で門外不出の種を代々伝えている話しを聞いたことがある。逆に戦後は、青首大根が殆どになってしまい品種がどんどん減っている。グルメ日本と騒いでいるが、こういうのを見ると日本の食文化は後退している様に思えてならない。それでも、大根類は野菜の中では生産量がダントツ1番だそうだ。

大根役者よろしく「大根はあたらない」というけれど、西洋人は大根おろしが苦手な人が多い。唐辛子の辛さは大丈夫だが、アブラナ科の辛さ、つまり大根やわさびの辛さは慣れないと胃に来るという。西洋にもホースラディッシュマスタードなど同系列の辛さはあるのだけど、大根おろしで秋刀魚を頬張ったり、わさびをたっぷりつけるのには最初は抵抗がある様だ。辛み大根といえば、やはりおろし蕎麦だろう。辛い程美味しいという人も多い。僕は、辛み大根の摺り卸しで味噌を溶く信州の田舎風のスタイルが一番好きだ。これは嵌る。