牛蒡(ゴボウ)

henri772004-11-07


牛蒡をこれだけ大量に消費するのは日本人だけだそうである。自生地はヨーロッパ、シベリア、中国北部で、日本には自生していないにも関わらず、平安期に渡来して以来、お惣菜の主役近く迄上りつめて、すっかり無くてはならない野菜となってしまった訳だ。元々は漢方薬として伝わったそうだから、多分、韓国のツリガネ人参の様な扱いだったのだろう。彼らも、薬と認識しながらもツリガネ人参など、炒め物や、キムチの様な加工品にして準野菜として根っこの類いをよく食べている。韓国に滞在したとき、牛蒡のキムチや日本のきんぴら牛蒡に近い料理を出してもらったことがある。日本の軍政が残してきたものなのか元から彼らもそういう食べ方をしていたのかは定かではないのだが、相通ずるものがあったのかもしれない。今の日本では薬膳というと普通の食卓に上る料理とは別物の様に思われているが、存外昔はもっと距離の近いものだったに違いない。そういえば、沖縄料理でも「薬(くすい)むん」と言って、食材と生薬素材が近い関係にある。中国起源の医食同源という考え方だ。

牛蒡は、意外にキク科の植物だが、同じキク科でも典型的な菊のとは別の系統に属していて、薊(アザミ)の仲間である。あまり見たことのある人はいないと思うけど、薊とそっくりの花をつける。花びらが細く管状に変形しているのが特徴だ。寿司屋に行くと出てくる「やまごぼう」は、モリアザミという薊の根っこを使ったものだ。そして野原にあって普通「やまごぼう」と呼ばれている雑草は、また全然違う系統の草で、こちらの根には毒があって食べられない。ややこしいことだ。

さて、牛蒡と言えば、やはり関西系としては叩き牛蒡が1番の調理例に挙がる。お正月は、関東では甘辛く煮た煮物の牛蒡が多いけれど、関西ではもっぱらこちらである。牛蒡の皮をこそげ、適当な大きさに切ってからちょっと歯ごたえの残る様に茹でる。取り出したら、すりこぎ等で軽く叩いて繊維を柔らかくほぐし、すりゴマと砂糖をお酢と少量の薄口醤油で溶いたものと和えて出来上がりだ。和えてから一晩程置くと味が染みて美味しい。